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3Dプリンター
3Dプリンター(英: 3D printer)は、通常の紙に平面的に印刷するプリンターに対して、3DCAD 3DCGデータを元に立体(3次元のオブジェクト)を造形するデバイスを指します。通常は積層造形法によるものを指し、切削造形法によるものは3Dプロッター(英:3D plotter)と呼びます。歯科技工に用いる詰め物や被せ物は3Dプロッターを用います。ここでは、積層造形法による歯科への応用について書きます。
私自身は2008年から3Dプリンターの歯科への応用を考えてきました。当時は3Dプリンターのサイズは大きいものしかなく、データを丸紅情報システムズや友人の3DSYSTEMS社の3Dプリンターで造形していました。2012年からStratasys社のMojo(図1〜5)を導入して、3Dプリンティングを行っております。
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図1
3Dプリンター Mojo(Stratasys社)とパソコンはUSBで接続されています。
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図2
モデル材とサポート材手に持っているのがそれぞれのプリンターヘッドです。
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図3
プリンターヘッドをヘッドソケットセットしています。指の先がヘッドセンサーです。
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図4
プリンターヘッドに繋がっている白いコードが材料で、これを熱で溶かしながら積層します。
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図5
モデル材とサポート材が積層される場所で、左上にモデル材とサポート材のヘッドあります。作業するする部分がZステージでその上に黒いプラステックのモデルベースがあります。
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図6
こんなフィギュアも作ることもできます。もっとセクシーなフィギュアもあるのですがスタッフに反対されました。(´-ω-`)笑
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3Dプリンターとは立体的な構造物を製作することができる機器です。フィギュア(図6)などを製作する場合にはパソコン上に3Dソフトを用いて、立体像を作りそのデータをSTLデータ(注1)に書き出します。このSTLデータで始めて3Dプリンターを動かすことができ、フィギュアを作ることができます。実際にある物や人物をスキャンニングする時に使用するのが3Dスキャナーです。3DスキャナーのデータをSTLデータにして、3Dプリンターで造形すると、実際の人物や物の模型を製作することができます。
骨を造形するにはCTが骨の3Dスキャナーの役割をします。CTで得られたDAICOMデータ(図9 10,注2)を用いて、医療用のアプリケーションソフトに入れ、アーチファクト(注3)や必要のない部分を除去して、STLファイルに書き出します。3Dプリンターに繋いだパソコンにSTLデータを入力すると 3Dプリンターを動かすことができ、CTで撮影された骨の形態が再現されます。MRIでは血管や臓器を造形するデータを得ることができます。
3D模型を用いて骨や歯の状態を知ることは、インプラントの埋入手術や歯周病の増骨手術などの術前の診査診断に助けになります。また増骨手術後の増骨状態の確認をすることもできます。歯科医師がCT画像を理解できていても、患者様に理解して頂く必要があり、3D模型はその助けになります。
3Dプリンター(Mojo)を使用した骨の造形法について、写真と図説を見て理解して頂こうと思います。(図7〜図32)
図説
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図7
事故で右上の2番目の歯をなくした患者さんです。そこに人工歯を歯科用の接着剤で接着しています。
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図8
CTの画像です。
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図9
DICOMデータファイルの中身221個のファイルがあります。当然範囲が広がれば数が増えます。
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図10
DICOMデータファイルの中身を拡大しました。こうした画像が入っています。
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図11
医療用のアプリケーションソフトにDICOMデータを読み込みボリュームレンダリングの画像です。
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図12
必要ない部分やアーチファクトを除去し、これをSTLデータに変換しました。
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図13
データが完成しました。
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図14
3Dプリンター用の「Print Wizard Software」を起動して、STLデータを読み込みます。造形する模型の倍率や3Dプリントする方向を決めます。
3Dプリントする方向によりサポート材の量が違います。量が多いほど作業時間が長くなります。このケースでは上顎ですが3Dプリントする方向を反転させました。
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図15
同じ3D模型でも造形方向により、造形時間も使用する材料の量も違いがでます。このケースの場合には上下反転が造形時間を短くできます。
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図16
いよいよ3Dプリントできます。予想印刷時間は5時間51分です。(*´Д`)=3ハァ・・・
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図17
造形中モデル材のヘッドが3Dプリントしています。
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図18
造形中拡大
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図19
モデル終了のパソコン画面
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図20
クールダウンの後Mojoの扉を開いています。
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図21
3Dプリントが終了した3D模型です。クリーム色をしているのがモデル材で白いのがサポート材です。
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図22
ベースプレートごとMojo本体から3D模型を取り出します。
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図23
ベースプレートから3D模型を外します。
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図24
サポート材を除去するためにガラスの容器に入れます。
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図25
サポート材を除去するための溶解剤(アルカリ性)をガラスの容器入れます。
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図26
溶解剤を入れたばかりの時は透明です。
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図27
ガラスの容器の蓋をして超音波洗浄器に入れます。
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図38
サポート材が溶けてくるとガラス容器の中の透明の溶解剤が白濁してきます。
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図29
サポート材除去の途中です。まだサポート材が残っています。
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図30
完成した3D模型欠損部を正面にして撮影
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図31
鼻腔底方向から撮影
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図32
口蓋側から撮影
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注釈
(注1)STLデータ Standard Triangulated Language
STLファイルは3Dプリンターメーカーの3D Systems社が開発しました。
ほとんどの3Dプリンターがこの形式に対応しています。STLファイルでは、三角形の頂点の座標と垂直方向(法線ベクトル)によ って定義されたファセットと呼ばれる小さい三角形のポリゴン(パッチ)の集合により、立体を表現したデータを保存するためのファイル形式です。
(注2)DAICOMデータ Digital Imaging and Communications in Medicine
CT・MRI・内視鏡・超音波などの医用画像診断装置、医用画像プリンター、医用画像システム、医療情報システムなどの間でデジタル画像データや関連する診療データを通信したり、保存したりする方法を定めた国際標準規格です。
(注3)アーチファクトartifacts
CT撮影をするとさまざまなアーチファクト(障害陰影:実際の物体ではない二次的に発生した画像)の出現です。CTスキャン装置の特徴、撮影条件、物体の形状や密度、再構成法などにより、発生するアーチファクトの種類や強さがそれぞれ異なります。歯科で代表的なアーチファクトはメタルアーチファクト、モーションアーチファクト 等があります。CT画像を診るときは、アーチファクトがあるのでそれを気つけて診断する必要があります。3D模型を造形する場合には、アーチファクトをそのまますると、実際とは違った模型になるので、ソフト上でコントラストなどを調整してアーチファクトを除去します。
(注4)ボリュームレンダリング Volume Rendering.
CTデータをパソコン画面上に立体的見せる方法として、サーフェスレンダリングとボリュームレンダリングがあります。 サーフェスレンダリングは各ボクセルがもつ信号強度をもとに、同じ輝度値の表面を計算で求め,三次元の表面データを立体的に表示する。
ボリュームレンダリングはボクセルデータのもつ輝度値に加えて,透明度の情報を用いて三次元画像を再構築します。透明度の設定法により、対象物を半透明にして内部の様子を同時に表現することや不要な部分を透明にすることにより、任意の断面などを表示することができます。表示対象物を不透明にして、それ以外を透明にして処理するとサーフェスレンダリングと同じ表現になります
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