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マイクロスコープ
マイクロスコープはカール・ツァイス社が1953年に耳鼻科用の手術顕微鏡を開発したことから、眼科にも臨床応用されるようになりました。1958年には脳神経外科、1970年代には心臓外科、そして1990年代には歯科でも根の治療に臨床応用されるようになりました。
肉眼で近接する2点を識別できる限界は0.2mmで、それ以下の短い距離では判別することはできません。マイクロスコープ(図1)を使用することにより患部の見えなかった所が拡大され、詳細に識別することができます。今まで歯科医師の“経験”や“勘”だけに頼ってきた治療では不可能だった高度なレベルの治療を行うことができるようになります。例えば、歯を詰めたり被せたりする治療で歯を削った後歯面を肉眼で見ると、スムースな面に仕上がっている様に見えても、拡大視野で見るとギザギザな鋸歯状のこともあります。拡大視野で仕上げるとスムースな面に仕上げることが可能です。拡大視野の欠点としては、拡大すると狭い範囲しか見えなくなり、被写界深度*1も浅くなるためアシスタントの補助が必要になります。木を見て、森を見ない例えもあるので、症例に応じて、また治療する内容によってその倍率を変化させる必要があります。
図1 マイクロスコープを使用した治療をしています。
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図2 Hazukiルーペ 虫眼鏡のタイプで1.6倍の拡大率です。
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拡大視野での治療には、
1 神経の管(根管)が細く見つけにくい根の治療
2 被せたり詰めたりする時の歯の切削の仕上がり確認
3 被せたり詰めたりする時の削った部分と被せ物(補綴物)、詰め物(修復物)の適合状態の確認と余剰セメントの除去
4 インプラント治療
5 増骨手術の骨表面の軟組織除去
6 歯周治療
これ以外にも様々な歯科治療に使用することが可能です。
拡大視野の機材
拡大視野が得られる機材には、単レンズの拡大鏡、レンズ・フレーム固定性のルーペ、マイクロスコープの3種類が代表的な物として挙げられます。
単レンズの拡大鏡
1枚のレンズで拡大するルーペ(虫眼鏡)で、Hazukiルーペ(図2)などが代表的なものになり、これが1.6倍の倍率です。
レンズ・フレーム固定性のルーペ
マウント方式によりメガネに固定するタイプと、頭にヘッドバンドで固定するタイプの2種類があります。レンズは2枚以上組み合わされ、ガリレオン式(図3〜5)とケプラー式(図6.7)の2種類があります。前者は一般的に2枚のレンズ構成となり、シンプルな構造で軽量コンパクトなボディ設計が可能になります。シンプルな構造のため収差*2が生じやすく、そのため倍率は2.5倍程度に制限されます。
後者は5枚のレンズとプリズム(図8-1 8-2)で構成されています。光路内にプリズムをいれ、光を屈折させることにより、像質を低下させずに拡大率(3〜5.5倍)を上げることができます。
図3 ガリレオン式ルーペ ガリレアンルーペマルチ TTLタイプ
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図4 カール・ツァイス双眼ルーペEyeMag Smart 2.5倍の倍率です
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倍率は2.5倍と3.0倍の2種類
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図5 ガリレアンルーペマルチ TTLタイプで治療をしています。
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図6 ケプラー式光学システムを採用したEyeMag PRO 私のクリニックでは3.6倍ルーペを使用しています。
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図7 EyeMag PROで虫歯の治療をしています。
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図8-1 ガリレオ式は2枚のレンズで構成され、重さも軽量化できますが、倍率は約2.5倍に制限されます。それ以上の倍率では収差*2が生じ易くなります。
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図8-2 ケプラー式は5枚のレンズとプリズムで構成されています。光路内にプリズムをいれ、光を屈折させることにより、像質を低下させずに拡大率を3〜5倍に上げることができます。
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マイクロスコープ(実体顕微鏡)
私のクリニックで使用しているライカM320-D(図9〜12)はダイヤルを回転させることで5段階(X6.4/X10/X16/X25/X40)倍率(図15〜17)を変更することができます。拡大率が上がると視野が狭くなると共に、暗くなります。そのためマイクロスコープでは明るい光源が必要で、最大100,000Luxの高輝度LEDが、口腔内を広く明るく照らします。また病気の部分や治療内容を写真やビデオで記録することができ、それを使用して説明することができます。
*1ピントを維持できる奥行きの距離
*2収差とは、光学系において理想的な結像からのズレのこと。
図9 私のクリニックで使用しているマイクロスコープはライカM320-Dです。
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図10 マイクロスコープは虫歯の治療や根の治療などにも使用しています。
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図11 外科手術や再生治療にも使用します。マイクロスコープの視度調整をしています。視度調整はカメラのピント合わせと同じです。
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図12 インプラントの治療にも使用します。アシスタントはモニターを見て器具の受け渡しをします。
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図13 白米をマイクロスコープで見ました。 6.3倍です。
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図14 10倍
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図15 16倍
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図16 25倍
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図17 40倍
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