虫歯の治療(カリオロジーに基づく治療)
これまでの虫歯の治療はガンの治療のように「早期発見、早期治療」が良いと信じられていました。カリオロジーの研究によって虫歯の初期の段階では、健康な歯に戻る可能性について報告されています。歯の表面はカルシウムが溶け出す脱灰とカルシウムが付着する再石灰化を繰り返しています。このバランスが脱灰に傾くと虫歯になります。この時フッ素を歯に塗ると、脱灰を抑制でき、再石灰化を促進して、健康な歯に戻りますので歯を削る必要がありません。
従来の虫歯の検査の反省
従来までは、初期虫歯は目で見る視診と探針を用いて歯を調べる触診で検査をします。定期検診で「C1,C2」などの言葉を聞かれたことがあると思います。これはC1がエナメル質内の虫歯、C2が象牙質内の虫歯、C3が神経まで至っている虫歯、に分類していました。 初期虫歯を探針で診査することにより危弱なエナメル質を破壊すると共にプラークを虫歯の深部に送り込むことになり、エナメル質の再石灰化のチャンスを奪うことになります。またカンやコツに頼るため正しいデータを取ることが出来ません。歯に黒い汚れがあると虫歯と診断され削ることになります。実際は汚れの場合も考えられます。白い部分でも虫歯で脱灰していることがあります。
新しい虫歯検査器「DIAGNodent」の登場
DIANGOdent(図1)はドイツのUlm大学のHibstとKaVo社そしてスイスのBern大学のLussiらが開発したレーザー虫歯診査器です。診査に使用するレーザー光は655nmで最高出力が1mWのパルス波の赤色レーザー(図2)で、クラス2に分類されます。レーザーポインターのレーザーと同様のものである。このレーザー光を歯に照射して、跳ね返った光の蛍光強度を計測することが出来ます。
この蛍光強度の違いは、ナンバーディスプレイに虫歯の進行度により数字(0〜99)で表示されます。ナンバーディスプレイは2つあり、向かって左はリアルタイムの測定値です。(図3〜6)
。
|
|
図1
虫歯の診断機 DIANGOdent
|
図2
先端部から1mWのパルス
波の赤色レーザーがでる。
|
|
|
図3
患者様は奥から2番目の歯
が凍みて、来院されました。
|
図4
計測すると虫歯の部分が特定できました。(左上のメーターの数値が虫歯の脱灰度いを示します。 左の43が現在計測している虫歯の脱灰度右が最高値を示します。)
|
|
|
図5
赤の矢印の先の部分(黒くなっ
ている所)に虫歯があります。
|
図6
詰めてある金属をはずしたところです。
赤く染まっている部分が虫歯になります
。 |
カリオロジーに基づく虫歯治療
DIAGNodentで計測した計測値により虫歯治療の方法を選択することになります。
- 0〜10 の場合には健康な歯です。
定期検診を継続していただくことになります。
- 11〜30の場合には初期虫歯です。
再石灰化を期待して定期検診を継続する必要があります。フッ素で再石灰化を促進させます。
- 31〜60 虫歯になっています。
エナメル質にとどまっている場合には、レーザー照射とフッ素を組み合わせることにより、削らずに治療することが可能です。
- 61〜99深い虫歯になっています。
歯を削って神経に近い場合には、間接覆髄する必要があります。また神経が出ても僅かであれば、水酸化カルシュウム(直接覆髄)充填することで神経をとらずにすむ場合もあります。
|
|
図7
虫歯が深い場合にはグラスアイオノマーなどを神経に近い部分に入れ神経を守ります。
|
図8
コンポジットレジン充填しました。 (保険治療)
|
副作用
Diagnodentは赤色レーザーの光を当てることができる場所を調べることができます。しかし、修復物の下や歯並びの悪い部位には光が到達できず調べることができません。そのためX-線写真と組み合わせて診断する必要があります。
治療のコンセプト
国内外で最新とされる治療は出来る限り、患者様に提供するようにしております。また出来るだけ歯を削らずに治療出来る方法を選択しております。「詰める」「被せる」場合にも自然な歯に見える方法を選択しております。ただ治療法には適応症があり、患者様のご希望される治療法が適応を超えている場合には、ご説明して、出来るだけ歯が健康で長く使用できる方法を選択させていただきます 。
|